井蛙考-とある社会人の備忘録

うわべに見ゆる以上であれ

メモ 瀬戸利春「検証 西部ニューギニアの攻防」

 

歴史群像 2016年 04 月号 [雑誌]

歴史群像 2016年 04 月号 [雑誌]

 
太平洋戦争におけるニューギニアの戦いを現代軍事概念を用いて各階層で考察したもの

登場した概念:キャンペーン(戦役)、立体戦、狭海パラダイム、機動戦理論、作戦線、間接アプローチ、跳躍台

 

・ 連合軍によるブナ攻略の開始からビアク島、モロタイ島攻略に到るまでフィリピン奪還に向けたキャンペーン(戦役)を記述

※ キャンペーン:複数の作戦を相関連させて一連の軍事行動とする概念

 
・ 必要な島嶼だけを攻略していくスキップ戦略(蛙飛び作戦)の利
⇒ 日本軍の、守りを固めれば迂回されるというジレンマ(逆説的論理)
 
・ ニューギニアは地理的条件により島嶼戦的様相を呈する場所
⇒ ミラン・ヴェゴの「狭海パラダイム」概念における「ポジション(要点)(≒作戦階層において、策源地として作戦立案の基礎となる泊地)」
⇒ 制海制空権あってこそ、要点から要点への海上交通線の利用が可能
⇒ 作戦階層の視点から泊地と航空基地の存在が重要
 

結論 

・ 戦略・作戦階層においては「機動戦」として捉え、それを担保したものとして航空優勢制海権に守られた海上輸送力(と補助的な空輸能力)と考察

・ 戦術階層においては「消耗戦」として捉える一方で、「機動」という戦術的手段の有用性について指摘

 

メモ セネカ「人生の短さについて」(1980)岩波文庫

 

人生の短さについて (1980年) (岩波文庫)

人生の短さについて (1980年) (岩波文庫)

 

 

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セネカ(紀元前1年頃~65)

 

「偉大な人物、つまり人間の犯すもろもろの過失を超絶した人物は、自己の時間から何一つ取り去られる事を許さない。」

 

「自分のことを『半ば自由を失ったもの』とキケロは言った。

しかし誓って言うが、賢者は決してそんな卑屈な言葉を用いるものではない。

半ば自由を失う事など決してなく、完全にしてかつ安定した自由を常に持ち、

束縛を受けず、己自らを支配し、しかも他にぬきんでるであろう。

なぜならば、運命を乗り越えているものを、乗り越えられるものは何もないからである。」

 

「自分の銭を分けてやりたがるものは見当たらないが、生活となると誰も彼もが、なんと多くの人々に分け与えていることか」

 

「偉大な人物、つまり人間の犯すもろもろの過失を超絶した人物は、自己の時間から何一つ取り去られる事を許さない。それ故に、この人生は極めて長い。用いられる限りの時間を、ことごとく自分自身のために当てているからである。そのため、どんな時間も無為・安穏のうちにあったことはなく、他人の自由にされたこともない。」

 

「誰もみな自己の人生を滅ぼし、未来に憧れ現在を嫌って悩む。しかるに、どんな時間でも自分自身の必要のためにだけ用いる人、毎日毎日を最後の一日と決める人、このような人は明日を望むこともしないし恐れることもしない。」

 

「生きる事の最大の障害は期待を持つという事であるが、それは明日に依存して今日を失う事である。運命の手中に置かれている物を並べたて、現に手元にあるものは放棄する。君はどこを見ているのか。どこに向かって進もうとするのか。将来のことはすべて不確定のうちに存する。今直ちに生きなければならぬ。」

 

「万人のうちで、英知に専念する者のみが暇のある人であり、このような者のみが生きているというべきである。それは、彼らが単に自己の生涯を立派に守っているからだけではない。彼らはあらゆる時代を自己の時代に付け加える。」

 

「時は過去になったのか。賢者はこれを回想によって摑まえる。

 時は現在にあるのか。賢者はこれを活用する。

 時は未来にあるのか。賢者はこれを予知する。

 あらゆる時を一つに集めることによって、賢者の生命は永続せしめられる。」

 

メモ 浅野裕一著「「孫子」を読む」(1993)講談社現代新書

 

「孫子」を読む (講談社現代新書)

「孫子」を読む (講談社現代新書)

 

 

浅野裕一(1946~) 

 

〇 春秋時代の中原における戦争形態

軍隊構成ー特権的な身分兵士により構成、将軍は随時任命、動員兵力の限界

兵器の性格ー戦車、高度の操縦技術、多額の維持費用、戦闘の様式化

戦闘様相ー野戦・攻城戦ともに短時間・短期間、個人の武勇や技量を重視

軍事思想ーいまだ体系化されず

〇 『孫子』の想定する戦争形態

軍隊構成-10万の大軍の動員、将軍の独立指揮権の強調、将軍の専門職化、

兵器の性格ー戦車よりも歩兵重視、複雑な戦術、兵士の心理に着目、個人よりも集団全体の態勢や気勢を重視

戦闘様相ー敵国内への長躯侵攻、数年にわたる長期持久戦、国力を傾けての総力戦

孫子の兵学思想の特徴ー短期決戦の主張、間接的戦略・情報収集・諜報活動の重視

〇 孫臏が活躍した戦国時代の戦争形態

軍隊編成ー数十万から100万、将軍の専門職化

兵器の性格ー歩兵中心+騎兵の出現

戦闘様相ー長期持久戦、消耗戦、総力戦の様相を深める、戦線の膠着化、城邑の争奪が目的の一つに

孫臏の兵学思想の特徴ー騎兵の運用に関する戦術の登場、攻城戦、陣地の構築法陣法の具体化

〇 『孫子』の各章の構成

第一 計篇 

 開戦前に自国と敵国の状況をくわしく比較し、どちらに勝算があるのかを冷静に計謀するよう説く

第二 作戦篇

 国内で軍を編成したのち、外征軍を派遣するために必要な軍費と国家経済との関係について述べる

第三 謀攻篇

 実際の戦闘によらず、計謀によって敵を攻略すべきことを述べる

 孫子の戦略論の総括

第四 形篇

 自軍は不敗の態勢を維持しながら、敵軍が敗北を招く態勢になるのを待ち受け、無理なく勝利すべきことを説く

 表面に出ない必勝の態勢

第五 勢篇

 兵士の個人的勇気に頼って勝とうとするのではなく、戦闘に突入する軍全体の勢いによって勝利すべきことを説く

第六 虚実篇

 敵軍の行動を自在にあやつりながら、兵力の相対的優勢を確保し、実によって虚を撃つ戦術を説く

 孫子兵学の一つの頂点

第七 軍争篇

 敵よりも遅く出発しながら、敵軍に先んじて戦場に到着する戦術を説く

第八 九変篇

 将軍が君主に任命されて軍隊の指揮権を掌握し、敵と決戦するまでの間に考慮すべき、九種類の臨機応変の対処法を説く

第九 行軍篇

 軍の進止や敵情偵察など、行軍の際に必要な注意事項を述べる

第十 地形篇

 各種の地形的特性をあげて、それぞれに適した戦術を示すとともに、あわせて軍隊の統率法をも述べる

第十一 九地篇

 九種の地勢の特色と、それぞれに応じた戦術を示すとともに、自軍をわざと絶体絶命の窮地に誘導し、兵士に決戦を命ずる戦法を説く

第十二 用間篇

 五種類の間諜を駆使し、敵の実情を事前に探知する、情報戦の重要性を説く

第十三 火攻篇

 火攻めの戦術を述べるとともに、戦争に対する慎重な姿勢を説いて、十三篇全体を締めくくる

 

著作

孫子 (講談社学術文庫)

孫子 (講談社学術文庫)

 

 

メモ 片岡徹也編「軍事の事典」(2009)東京堂出版

 

軍事の事典

軍事の事典

 

 片岡徹也(1958~2009)

 その当時権威とされていた典拠に記載された用例を通して、軍事の基礎概念の説明を行い、それにより語の背景にある、矛盾した部分も含めた、思想を浮かび上がらせることを目指した著作

 

 「現在、包括的な戦争の定義を目指して、多種多様な概念が各学問分野から提案されている。だが複雑で変貌を重ねていく戦争に対して、いずれも成功しているとは言い難い。とくに日本においては戦争研究は学問としての市民権をいまだ得ておらず、かといって周辺の社会科学からのアプローチも十分ではない。戦争研究はまだまだ未熟である。戦争を既存の科学の方法論で論じることには限界があり、ときとして誤った方向に、それは導く危険性がある。」18p

 

「いまだに戦争を突き放した立場で研究することは至難の業である。だが戦争が万人に影響し、無意味な戦争が多数の人命浪費につながることを考えれば、戦争研究に冷淡であってはならない。多くの人々が戦争について成熟した判断と知識を持っていればいるほど、健全な意思決定が行われる可能性も高くなることが期待できる。」19p

 

満州事変から支那事変、そして大東亜戦争の敗戦に至るまで、個々の「作戦」はあっても、それらを相関連した一連の戦役と捉える視点のなかったことは、長期的あるいは大局的な視野を欠いた用兵の病原の一つと考える」23p

 

「彼(シュリーフェン)は自らの構想する巨大な第一会戦の勝利が、そのまま本当に戦争の最終的決着につながるのか深刻に検討はしなかったし、この種の「理論的考察」で悩むには、彼は余りにも実践的な軍人であり過ぎた。また彼は「必要なことは実現可能」と考える傲岸なまでの精神主義者であった。これは昭和日本陸軍の用兵思想にも継承されている」35p

 

「だが平成二〇年現在のイラク情勢から見ても、みごとな会戦の勝利が、安定した平和の礎となる、迅速な戦争の終結につながるとは言い難いのである。二一世紀の我々は、いまだに一九世紀末のモルトケを苦しめた難問の解決策を見出していないのである。」37p

 

果たして旧軍に精神教育や軍人倫理と明瞭に区分された本当の意味での「兵学」、すなわちScience of War はあったのだろうか。「兵学」という語事態、いつの間にか旧陸軍の記憶からは消え去り、現在に到るも復活をしていない。・・・戦後間もない昭和二六年、旧陸軍の兵学と用兵思想を反省した文書が作られている。・・・これらの反省の原点にあるのは、ニューギニヤやソロモン、比島等の、補給の途絶した太平洋の島々に将兵を捨て子にして、多くの餓死者を出し、しかも食も戦闘手段もない将兵に降伏を許すことなく、なおも戦うことを要求して、出さずもがなの犠牲者を累積した戦い方、戦わせ方への苦い悔悟である。これは世界に通用する兵学ではない。・・・軍人が任務のために斃れるのは当然だが、任務達成が不可能になった際、麾下の将兵までも犠牲にする戦い方は、世界に通用する普遍性のある「兵学」から見て、きわめて特殊である。」48p

 

「メッケルは・・・日本陸軍の参謀の欠陥として、物事を容易になし得ると妄想することと並び、言語が簡明でないことをあげている」50p

 

「いま、こと改めて日本では絶滅に瀕している「兵術」の語に、なぜ照明を当てるのかといえば、兵術の側面を欠いた計画や理論は、観念の遊戯に堕す危険性があり、それは人命の犠牲を伴わずには済まないからである。」58p

 

今日の戦争においては、専門職である軍人が素人の政治家を説得できるか否かに勝利の鍵はかかっている。・・・平和を願いつつ軍事力を活用するというパラドックスは必ずしも万人が認めるとは限らないが、戦争に内在する予測不可能性を考えれば、戦争を研究する最も良い機会は戦争を行っていない平時なのであり、戦争のパラドックスを理解するための知的な鍵は軍事ないし用兵思想を含む戦争理論である。戦争の研究は一部の専門職だけの問題ではない。」105p

 

先の大戦は単に敵の物量によって敗れたのではない。知的分野においても敗れたのである。それは兵学の未成熟なかんずく戦略理論の未発達、戦略思想の独善によって象徴されている。そこから目をそむけ、日本的な精神要素の加味された道徳と区別のつけにくい戦略論に逃避することはあってはならない。」163p

 

第二次世界大戦大本営はこの「訓令戦術」から見たとき、委ねるべきを現地軍に委ねず数千キロの彼方から硬直した統帥を行っていた点にも問題がある。」235p

 

「現在の日本の「専守防衛」の概念も、このコーベットの論議に従って再定義が可能だと考える。日本は他国から何かを奪うために戦争をするのではなく、自由や民主主義を奪われるのを阻止する消極的な戦争の政治目標によってのみ戦うことを「専守防衛」と定義することも可能ではないか」353p

 

メモ ブロノフスキー他著「ヨーロッパの知的伝統」(1969)みすず書房

 

ヨーロッパの知的伝統

ヨーロッパの知的伝統

 

 〇 本書の叙述態度

1 もっとも広義における知性」の歴史

ある一つの分野の思想に限定されることなく、精神活動のスペクトル全体に関心

異なる分野の思想の相互作用を強調

 2 「思想の歴史を書くには、それらの思想と時を同じくして起こった諸事件の具体的な知識をあわせて述べなければならない。思想の研究は進化論的な研究であり、読者はその背後に諸事件のコンテキストや、思想が進化してきた物理的環境を感じ取らなければならない。すなわち、読者は事件の思想に及ぼす影響と、思想の事件に及ぼす影響とを見るべきである。・・・本書はとくに技術上、社会上の発明が与える衝撃に力点をおく」

 3 「ある思想を提示する正しい方法は、その思想が啓示としてひらめいた人たちの口を通して語ることにある。・・・また、彼らの生涯のおもしろさは、時代のさまざまな葛藤が、彼らにおいて良心の闘争として鮮明にあらわれているところにある。」

 

思想は、それがもはや時代遅れになった場合でも、死んだ思想とはならない。なぜなら、時代遅れの思想も、現代思想の中に進化の諸段階として生きているからである。」

 

歴史の研究が一種の解放-既存の諸思想からの解放ーであり、それら諸思想の進化の姿を見通したうえでそれらの思想にくっきりと焦点を結ぶことができる」

 

メモ 大木毅著「第二次大戦の〈分岐点〉」(2016)作品社

 

第二次大戦の〈分岐点〉

第二次大戦の〈分岐点〉

 

 

 戦史や軍事史を書く際に、より広い視座もしくは問題設定を確保するために必要な条件

 

1 ファクト=ファインディング 事実の発見

戦史や軍事史上の事象の実態を探り、これまで知られていなかったことを読者に提示する

 

2 アナリシス 

すでに知られていること、十二分に実証されていることであっても、新たな視座を取り、従来提起されていなかった疑問のもとに、対象となるテーマを俎上に載せること そのために必要なのはセンスオブワンダー(驚くことのできる感性)

 

3 ヒューマン・インタレスト

人間性にたいする興味をかきたてる

 

4 ナラティブ

語り口、叙述の研鑽(「何を書くか」だけでなく「どのように書くか」もおろそかにしない)

 

メモ 浅野祐吾著「軍事思想史入門-近代西洋と中国-」(2010)原書房

 

軍事思想史入門 ~近代西洋と中国~

軍事思想史入門 ~近代西洋と中国~

 

浅野祐吾(1918~1977)

 

軍事思想を形成する上で重要な要因 軍事制度、兵器技術、用兵思想 9p

 

「軍事思想史とはこのような総合的な軍事思想を歴史的に展開して各時代の特色とその歴史的変遷を辿るものである」10p

 

〇 観念としての軍事思想を捉える上でのアプローチ

1 戦争史を通じて見られる若干の特定の将帥等用兵実績から考察

2 その時代の著名な兵学書等を通じてその用兵理論を研究

3 戦争史研究の考察と兵学書等に見られる用兵理論との間の共通性の有無を調査

4 その時代の歴史を概観して諸々の社会的諸現象とこれらの用兵思想の誕生との間に存在する因果関係の有無を調査

5 再度軍事に目を向けて軍制や兵器等の具体的事実と用兵思想との関係において軍事思想成立の内的関係を確認

6 各時代の軍事思想の歴史的変遷(連続性と非連続性)を観察

 

「軍事思想史の研究においては前項で述べたようにほとんどが理論的な考察であり、これを通じて得るものは知識と言うよりはむしろ研究者自身の観察能力ではなかっただろうか」11p

 

用兵思想なるものは、唯物的な用兵理論と人間的な統率の両側面を包含する 167p

 

〇 用兵思想とその諸要素との相関に関する考察のまとめ 183p

1 常在不滅性(地理的要素、精神的要素、有形的要素は用兵思想形成に不可欠)

 総合性(諸要素が、総合された全体の中において存在していることに意義がある)

3 絶対的評価(それぞれの時代において一つの要素のみが特に絶対性に近い評価を受けていた)軍人の存在意義そのものにかかわる

 戦略的性格(絶対的評価を受けた要素は、戦略的影響をもたらす)

5 循環性(それぞれの主要素は循環する)

 異思想の共存性(各時代を代表する用兵思想には、常に相反する二種類の思想が共存)

 戦争様相(形態)と用兵主要素との関連性

 

解説 道標としての『軍事思想史入門』 片岡徹也

 ・兵学研究は浅野にとって全人格を賭しての使命であり軍人の存在意義そのものに関わる

・再び未熟な兵学や偏頗な兵学、さらには兵学研究の怠慢によって悲惨な出来事を繰り返してはならない

・兵学研究は日本国と日本国民の未来のためにあるという視座を失ってはならない

メモ キケロ-著、中務哲郎訳「老年について」(2004)岩波文庫

 

老年について (岩波文庫)

老年について (岩波文庫)

 

 キケロー()

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 5

「自然に逆らうのは、ギガンテスの如く神々を相手に戦うことに他ならないではないか。」14p

24,25

 「サビーニー地方の田夫であるローマ人を挙げることもできる。・・・この人たちは、自分にはまったく関係のないことが分かっていることにせっせと励んでいるのである。

 次の世代に役立つようにと木を植える

と、わが同胞スターティウスが『若い仲間』で述べているように。

 まことに、農夫なら、どれほど老いていようが、誰のために植えるのか、と尋ねられたら、ためらわずこう答えるであろう。

「不死なる神のために。神々は、私がこれを先祖から受け継ぐのみならず、後の世に送り渡すようにとも望まれた。」」29p

69

「わたしには、終わりあるものは永続するものとも思えないのです。何しろ終わりが来れば過ぎたものは流れ去ってしまうのだから。ただ徳と善き行いによって達成したことだけが残る。時間も日も月も年も過ぎて往く。そして往時は還らず。後来は知る由もない。人は皆、生きるべく与えられただけの時に満足しなければならぬ。」65p

76

全ての仕事に満ち足りることが人生に満ち足りることになる。」70p

84

「生を嘆くのはわしの気に染まぬ。また、生きてきたことに不満を覚えるものでもない。無駄に生きてきたと考えずに済むような生き方をしてきたからな。そしてわしは、わが家からではなく旅の宿から立ち去るようにこの世を去る。自然はわれわれに、住みつくためではなく仮の宿りのために旅籠を下さったのだから。」76p

85

「しかし仮りに、われわれは不死なるものになれそうにないとしても、やはり人間はそれぞれにふさわしい時に消え去るのが望ましい。自然はほかのあらゆるものと同様、生きるということについても限度を持っているのだから。」78p

メモ 徳永洋著「横井小楠ー維新の青写真を描いた男」(2005)新潮新書

 

横井小楠―維新の青写真を描いた男 (新潮新書)

横井小楠―維新の青写真を描いた男 (新潮新書)

 

 横井小楠(1809~1869)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/86/Yokoi_Shonan.jpg

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/86/Yokoi_Shonan.jpg

 

 「和とか戦いとかいっても結局偏した意見であって、時に応じ勢いにしたがって、そのよろしきを得るのが真の道理である。」52p

 

「命を奉ず孤臣千里の身

 青山碧海一望の春

 この行ただ心事を尽くさんと欲す

 成否は天にありて人にあらず」 

 

「堯舜孔子の道を明らかにし

 西洋器械の術を尽くさば

 なんぞ富国に止まらん

 なんぞ強兵に止まらん

 大義を四海に布かんのみ」137p

 

「道既に形体無し

 心何んぞ拘泥あらん

 達人は能く明了

 渾て天地の勢いに順う」195p

 

「よく勝さんに言ってください。今日はこう思うが、明日のことは分かりません。」194p

 

↓いつかこちらも読みたい

 

メモ リュシアン・フェーブル著、長谷川輝夫訳「歴史のための戦い」(1995)平凡社ライブラリ-

 

歴史のための闘い (平凡社ライブラリー)

歴史のための闘い (平凡社ライブラリー)

 

 リュシアン・フェーブル(1878~1956)

http://www.azquotes.com/public/pictures/authors/58/67/5867b3a5d1c94d19acdc42f3abaae91c/53cd016e57682_lucien_febvre.jpg

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 1 歴史と歴史家の反省ー1892~1933

事実は決して与えられているものではなく、通常、歴史家によって創造されるもの、いいかえれば仮説と推論の助けを借り、細心の注意を要するそして興味津々たる作業を通じて作り上げられるものなのです。」17p

「実は我々に教えられていた歴史、範として示されていた歴史とは、過去の助けを借りてなされる現在の神格化にすぎなかったのです。」20p

「歴史」とは「人間」を対象とする学問、人間の過去を対象とする学問であり、事物あるいは概念を対象とする学問ではありません。主張する人びとから切り離された思想?それぞれが持ち歩く、影響、思い出、読書、会話でできている、あの精神と呼ばれるトランクの単なる一部分としての思想?、作り、かつ尊重しつつ絶えず修正する人びとを抜きにした制度? とんでもない、このような思想、このような制度を対象とする学問では決してない。歴史には「人間」の「歴史」、最も広い意味の歴史しか存在しないのです。」27p

他のすべての学問と新しい同盟関係を絶えず取り結び、同一の主題にさまざまな学問の光を当てる、これこそ境界と障壁に苛立つ歴史に課せられた最も重要にして緊急かつ多産的な任務だといえるでしょう。」29p

2 歴史を生きるー歴史学入門

私は歴史を次のように定義します。「歴史とは、過去の人びとを、彼らが次々と地上に作り上げた極めて多様だが比較可能な(これは社会学の公準です)諸社会の枠の中に時間的に位置づけたうえで彼らのさまざまな活動と創造を対象にして科学的に行う研究」41p

問題提起こそ、まさにすべての歴史研究の初めであり終わりであるからです。問題がなければ歴史はない。あるのは単なる叙述、雑多な史実の寄せ集めです。」45p

「確信をもって申し上げます。歴史を研究するためには、決然と過去に背を向け、まず生きなさい。生活に没頭しなさい。さしずめ知的生活といったところでしょうが、多様な知的生活に。歴史家よ、地理学者でありなさい。同じく法学者、社会学者、心理学者でありなさい。物理的世界の諸科学を、諸君の眼前でめくるめくるような速さで変えている偉大な運動に目を閉じてはなりません。そればかりか実生活をも生きなさい。荒れ狂う海に生じていることを、岸辺から物憂げに眺めているだけで満足してはならない。」63p

3 嵐に抗してー新しい『年報(アナール)』のマニフェスト

「地上に出現して以来、人類は最も過酷な環境の中にも、それを変えるか小さな裂け目を見つめるかして入り込み、より大きな足場を築き何らかの役割を演ずるため、すなわち人間的な意味で生きるために辛抱強いそして素晴らしい努力を重ねてきた。我々の願いはひとえに、この努力、この営みの瞬間において人びとを把握することである。」77p

4 シュペングラーからトインビーへー二つの日和見主義的歴史哲学

ペルシア王「どんなにすべての歴史を学びたかったことだろう」

老賢者「陛下陛下、人びとは生まれ、愛し、死ぬのです」130p

6 新しい歴史に向かって

「歴史家の仕事のうちで最も興味津々たる部分は、無言の事物に口をきかせ、それらを産み出した人間とその社会に関し語らしめる努力にー究極的には、無言の事物の間に連帯と互助の大きな網の目をめぐらせ文書記録の不在を補う、この絶えざる努力にあるのではないだろうか。」180p

 

メモ シャルル・ド・ゴール著、小野繁訳「剣の刃」(2015)文藝春秋

 

剣の刃 (文春学藝ライブラリー)

剣の刃 (文春学藝ライブラリー)

 

 

シャルル・ド・ゴール(1890~1970)

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「剣の刃」は1932年の著書(講演録)

 

「今こそ、精鋭の軍人は自らの重き使命を自覚し、戦いの一事に専念し、頭をあげ、高い理想を見つめる時である。剣の刃先を鋭く研ぎすますために今こそ、精鋭の軍人は己にふさわしい哲学をうちたてる時である。そうすれば、そこから、より高次の展望と、自らの使命に対する誇りと国民の尊敬が生まれてくる。栄光の日の訪れを待つ、有為の人士が手にする唯一の報酬は、この誇りと国民の与える尊敬だけである。」15p

戦争

「指揮官の知性、本能、権威が戦争に生命を与え戦争を戦争たらしめるのである。」38p

「この不安、動揺の時代に、我々はフランス軍の伝統の絆を断ち切ってはならない。戦場で指揮をとらねばならない者の能力や情熱をたわめてはならない。」42p

気骨

「昔日の兵士にとっても、今日の兵士にとっても、団結、奮起、偉大さを与えるようなある種の信念が必要である。それゆえに、軍人社会に若々しい理想、選ばれし者としての特別な感情、思潮の一致をもたらし、情熱を呼び覚まさせ、才能を豊穣ならしめることができる、ある一つの徳が必要なのである。「気骨」〔名誉や金銭欲に対する打算を度外視した信念と精神力〕こそがその酵母となり、これこそが困難な時代の徳目となる。」51p

ドクトリン

「フランスの軍事思想よ、ア・プリオリなもの、絶対的なもの、教条主義の誘惑に抗せよ。屈するなかれ、そのために伝統を護れ。われわれは、そこから、精神には大胆さを、作戦には生命を、行動には豊穣さを与える大局観と、洞察力と、現実感覚を汲み取ることができるであろう。」125p

政治家と軍人

「遅かれ早かれ、予測されたものであろうとなかろうと、不意討ちを受ける形であろうと、こちらから仕掛けたものであろうと、戦争は起こる。」138p

「政治家と軍人が相矛盾する職務と偏見を超越した哲学を打ち立てることができれば、我々はこの上もなく素晴らしい調和を見出せるであろう。」158p

「彼らは国難に自分の存在の刻印を押すこと以外の人生を考えるべきではない。日常の羈絆を脱して歴史の大波だけを夢想すべきなのである。時代の喧騒や幻想にもかかわらず、両者が過ちを犯すことはない。国家の政治への奉仕なき大将軍は存在せず、祖国防衛の栄光なき大政治家も存在しないからである。」158p

 

↓ いつかこちらも読みたい。

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メモ 渡辺京二著「無名の人生」(2014)文春新書

 

無名の人生 (文春新書)

無名の人生 (文春新書)

 

 

「文明とは何かといえば、生がむき出しになった寄る辺のない実存を、束の間、なんとか救い出そうとする仕組み、それを文明と呼んでいるのでしょう。だけど、やはり原点には、寂しさを抱えたじぶんがあるということを自覚しておいたほうがいい。」13p

「彼ら江戸期の人間は、あまり自己執着はせず、自分というものを過大評価しなかった。そこが現代人との大きな違いだと思う。」10p

「「小さきもの」は、常にこのような残酷を甘受しなければならない運命にさらされています。かれらにもし救いがあるのなら、それはただ彼ら自身の自覚のうちになければなりません。自分がいかなる理不尽な抹殺の運命に襲われても、それの徹底的な否認によって乗り越えたいものだ。そう思いました。」39p

「自分の一生が自分にとって良いものであったかどうかは、国家や政治や社会情勢とは、究極的には何の関係もありません。どんな状況のなかでも自分が自分の一生の主人となりうる。」40

「自分のあるべき一生をまっとうして生きたのではなく、おそらく志半ばで死んでしまうのだから、無念な思いはきっとあるはずなのに、ただ黙って死んでゆくーこれが、原形としての人間の「生」の在り方だ。」43

「人生の一生には幸福も不幸もあるけれど、その評価は、自分で一生を総括してどう考えるかの問題だということになります。」71

私たちの日々の生を支えているのは、もっとささやかな、生きていることの実質や実感なのかもしれません。」73p

ケアに依存することによって生じる人間の自主性の喪失 79p

人は、集団に対して常に両義的な関係にある 130p

「自分の職業というのは、人間がこの世で生きる上での仮の姿です。」148p

嫌な仕事であってもその中に、何か納得できるもの、誇り得るものを探していく。そういう努力と工夫を続けるうちに、他人の指示に従ってイヤイヤ働くのではなく、自分が自分の仕事の主人となることができる

メモ 勝海舟 江藤淳・松浦玲編『氷川清話』(2000)講談社学術文庫

 

氷川清話 (講談社学術文庫)

氷川清話 (講談社学術文庫)

 

 勝海舟(1823~1899)

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人間の相場

維新の頃には、妻子までもおれには不平だったヨ。広い天下におれに賛成するものは一人もいなかったけれども・・・おれは常に世の中には道といふものがあると思って、楽しんで居た。・・・おれはただ行ふべきことを行はうと大決心をして、自分で自分を殺すやうな事さへなければ、それでよいと確信して居たのサ。」63p

今の外交は何をしとるのか

「国民が今少し根気強くならなくっては、とても大事業は出来ないヨ。隣の奥さんをいぢめるくらいを、外交の上乗と心得るやうでは困るヨ。今少し遠大に、しかして沈着に願ひたいものだ。」202p

方針を固定するな

人はよく方針々々といふが、方針を定めてどうするのだ。およそ天下の事は、あらかじめ測り知ることの出来ないものだ。網を張って鳥を待って居ても、鳥がその上を飛んだらどうするか。・・・おのれに執一の定見を懐き、これをもって天下を律せんとするのは、決して王者の道ではない。」241p

おれは大反対だったよ

日清戦争はおれは大反対だったよ。なぜかって、兄弟喧嘩だもの犬も喰はないぢゃないか。たとへ日本が勝ってもどーなる。支那はやはりスフィンクスとして外国の奴らが分からぬに限る。」269p

現在に応ずるのみ

「世間の人はややもすると、芳を千載に遺すとか、臭を万世に流すとかいって、それを出処進退の標準とするが、そんなけちな了見で何が出来るものか。男児世に処する、ただ誠意正心をもって現在に応ずるだけの事さ。あてもならない後世の歴史が、狂といはうが、賊といはうが、そんな事は構ふものか。要するに、処世の秘訣は誠の一字だ。」380p

メモ 朝河貫一著「日本の禍機」(1987)講談社学術文庫

 

日本の禍機 (講談社学術文庫)

日本の禍機 (講談社学術文庫)

 

 朝河貫一(1873~1948)

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「日本の禍機」は1909年の著作

前篇 日本に関する世情の変遷

今日、日本の要するところは実に反省力ある愛国心なり。まず明快に国家前途の問題を意識して、次にこれを処するに非常なる猛省をもってするにあらざれば、国情日に月に危かるべし。」13p

 

「米国は過去の政策および未来の利害の上より東洋の正当競争をますます固く主張せざるべからざる地位にあり、これがためにはその日に月に増進しつつある驚くべき深大の国力を傾けて、これを遂行することをも辞せざる決心を有するものなり。将来は味方として頼むべく、敵として恐るべきこと世界列国のうち米国のごときものあらざるの時来るべく、而してこれを我が敵たらしむると味方たらしうむとは、一に日本の動作これを決するのみならん。何となれば米国の対清政策は変動することなかるべければなり。かつ将来清国に関して米国と刃を交うるものはその何国たるを問わず、もっぱら私曲のために戦うものと世に判ぜられんか。」21p

 

「ひそかに日本当局者の心を察するに満州に関する今日の世論は一時の現象に過ぎざれば、日本だに沈黙せば自然に消滅すべし、今自ら弁護するはかえって世の注意を促し疑惑を増す所以なり、と思わるるに似たり。」21p

 

「けだし日本の最も恐るべきところは清国にあらず欧米の強国にあらず、実に己れを不正の地に陥れ清国および欧米をして正義の側に立たしむるにあるなり。真に国を愛するもの誰か日本がかくのごとく正義の賊、進歩平和の破壊者たるの地位に陥るを目撃するに忍びんや。」65p

 

「将来の日本の南満州における方針および行為、従来と異なることなくば、日本はすみやかに世界に孤立し、日本と共に東洋の主たるべき清国を我が敵とし、かつ彼をして他の強国に頼らしめ、東洋の平和および進歩のために貢献するところ大なるべき日本がかえってこれを妨ぐる張本人とせらるるにいたらん」121p

後篇 日本国運の危機

「日本もし旧外交をもって支那に対する方針となさば、米国あるいは我が敵となることあるべく、また日本もし主位に立ちて新外交の二大原則を行わずば、米国必ず代りてその任にあたるべく、もしこれに反して、日本もし誠実にこれを遂行して東洋の進歩を謀らば、米国は必ず我が強大の与国となるべしと。而して彼が方針は不動なるがゆえに、以上の大事を決するの自由と責任とは彼にあらずして我にあるなり。静かに此決の分かるる所の広大無辺なるを想像すれば、これおそらくは第二十世紀の最大問題となるべく、少なくとも日本国史上の最大事件なるもののごとし。ゆえに余はあえて今日を指して日本の最危機となさざるを得ざるなり。」217p

結論 日本国民の愛国心

「余が将来の愛国心として見んことを切望するは、実に義心と、意力と、公平なる態度と沈重の省慮とを具備せるものこれなり。・・・余は第三と第四との両点に関して国民の深く考慮せられんことを希望す。・・・外面平凡なるがごとく、一の壮烈なる事なきがことくにして、実は極めて堅硬なる道念と極めて精微なる省察力とに頼るにあらざれば忽然危険に陥るべき霊妙複雑の機会日にますます多からんとするは、今後の社会の本色なるべし。」224p

 

メモ 宮城谷昌光 「管仲」

管仲〈上〉 (文春文庫)

管仲〈上〉 (文春文庫)

天とは広大な哀しみであるのか 69


貧しさにうちのめされてばかりいると、他人を思いやる心を失う 76


たとえ裏取引を見透かしても、物事の本質を捉えたことにはならない。物事の本質とは、自分との切実な関わりの中でみすえるものだ 85


直感は、理や知識を超えたところで、人生の指標して樹つことがある。道を誤るということのひとつは、自分の直感を疑うことだ 106


天を動かすほどの生き方をしなければ、天のたすけはない 110


「捨てない」 という思想 121


教養の有無は、知識の多少ではなく、努力の的を自分で据えられるか否かにある 127


欲望を持つのなら、私利を遮断しなければ、己を見失う。欲望を持たないのなら、博愛を推進しなければ、己に固執しすぎてやはり己を見失う131


精兵は、どのような戦法にも耐えられる体力を持つ 158


実在の中に不在を見る 160


優れた戦術は、予見力をそなえた観察眼と速断を秘めた実行力がなしうるものであろう 165


ことばははかない。こわれやすいことばを守ろうとするには、そうとうな力がいる。人の努力の大半はそこにある。人の強さもそこから生ずる。220


多数が追いつけぬ努力をして、多数の目には成果と映るものを得ながら、自身の努力にいつも虚しさを感じる者こそ非凡であり、じつはその虚しさは比類なき努力家にしか見えぬ虚しさであり、そこから比類なき人格が巣立つのである 257


人は生まれた時に、何も持っていなかった。結婚は人をその時に還すのだ。 276