井蛙考-とある社会人の備忘録

うわべに見ゆる以上であれ

メモ 朝河貫一著「日本の禍機」(1987)講談社学術文庫

 

日本の禍機 (講談社学術文庫)

日本の禍機 (講談社学術文庫)

 

 朝河貫一(1873~1948)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a5/Kwan-Ichi_Asakawa.jpg

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「日本の禍機」は1909年の著作

前篇 日本に関する世情の変遷

今日、日本の要するところは実に反省力ある愛国心なり。まず明快に国家前途の問題を意識して、次にこれを処するに非常なる猛省をもってするにあらざれば、国情日に月に危かるべし。」13p

 

「米国は過去の政策および未来の利害の上より東洋の正当競争をますます固く主張せざるべからざる地位にあり、これがためにはその日に月に増進しつつある驚くべき深大の国力を傾けて、これを遂行することをも辞せざる決心を有するものなり。将来は味方として頼むべく、敵として恐るべきこと世界列国のうち米国のごときものあらざるの時来るべく、而してこれを我が敵たらしむると味方たらしうむとは、一に日本の動作これを決するのみならん。何となれば米国の対清政策は変動することなかるべければなり。かつ将来清国に関して米国と刃を交うるものはその何国たるを問わず、もっぱら私曲のために戦うものと世に判ぜられんか。」21p

 

「ひそかに日本当局者の心を察するに満州に関する今日の世論は一時の現象に過ぎざれば、日本だに沈黙せば自然に消滅すべし、今自ら弁護するはかえって世の注意を促し疑惑を増す所以なり、と思わるるに似たり。」21p

 

「けだし日本の最も恐るべきところは清国にあらず欧米の強国にあらず、実に己れを不正の地に陥れ清国および欧米をして正義の側に立たしむるにあるなり。真に国を愛するもの誰か日本がかくのごとく正義の賊、進歩平和の破壊者たるの地位に陥るを目撃するに忍びんや。」65p

 

「将来の日本の南満州における方針および行為、従来と異なることなくば、日本はすみやかに世界に孤立し、日本と共に東洋の主たるべき清国を我が敵とし、かつ彼をして他の強国に頼らしめ、東洋の平和および進歩のために貢献するところ大なるべき日本がかえってこれを妨ぐる張本人とせらるるにいたらん」121p

後篇 日本国運の危機

「日本もし旧外交をもって支那に対する方針となさば、米国あるいは我が敵となることあるべく、また日本もし主位に立ちて新外交の二大原則を行わずば、米国必ず代りてその任にあたるべく、もしこれに反して、日本もし誠実にこれを遂行して東洋の進歩を謀らば、米国は必ず我が強大の与国となるべしと。而して彼が方針は不動なるがゆえに、以上の大事を決するの自由と責任とは彼にあらずして我にあるなり。静かに此決の分かるる所の広大無辺なるを想像すれば、これおそらくは第二十世紀の最大問題となるべく、少なくとも日本国史上の最大事件なるもののごとし。ゆえに余はあえて今日を指して日本の最危機となさざるを得ざるなり。」217p

結論 日本国民の愛国心

「余が将来の愛国心として見んことを切望するは、実に義心と、意力と、公平なる態度と沈重の省慮とを具備せるものこれなり。・・・余は第三と第四との両点に関して国民の深く考慮せられんことを希望す。・・・外面平凡なるがごとく、一の壮烈なる事なきがことくにして、実は極めて堅硬なる道念と極めて精微なる省察力とに頼るにあらざれば忽然危険に陥るべき霊妙複雑の機会日にますます多からんとするは、今後の社会の本色なるべし。」224p